在宅緩和ケア対応薬局データベース当サイトについて

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ある病棟の光景です。

内服薬や貼り薬の医療用麻薬では痛みや呼吸の苦しさがどうしてもコントロールできなかった患者さんに、注射剤を使用したら苦しみが取れ、患者さんやご家族の中に「家に帰りたい」との気持ちが芽生えてきました。病院スタッフはそのお気持ちを受けて、在宅で患者さんを支える医師や看護師さんなどのスタッフを探し始め見つかりました。しかし、この患者さんの地元には医療用麻薬の注射剤を扱える薬局がどうしてもないのです。そのような状況の中、必要な薬をどう調達するかを考えている間に、患者さんの容態が悪くなってしまい、結局「家に帰りたい」との望みをかなえることができなかった・・・

また、外来で治療を受けられている患者さんで、痛みが強くなって薬が追加されたが、近くの薬局に在庫がなく薬局を何か所も探し回らなければならなかった・・・

「こんな悲劇は繰り返したくない!」との思いで、「在宅緩和ケア対応薬局のネットワーク化と情報提供」研究班は発足しました。

我が国において末期がんの方のための緩和ケアは、使用できる薬剤が増えるなど着実に進歩しています。しかし、我が国に5万件以上あると言われている薬局のすべてが医療用麻薬の在庫を揃えたり、無菌調剤の設備を整えたり、患者さんの状態に合わせて即座に対応することは困難なケースが少なくありません。在宅緩和ケアの患者さんを支えるためには専門的な機能と知識を持った在宅緩和ケア対応薬局(Palliative Care Pharmacy : PCP)の存在が不可欠であると考えています。

そこで、このたび公益財団法人笹川記念保健協力財団の助成を受け、日本在宅ホスピス協会の小笠原会長のご協力を頂き、「末期がんの方の在宅ケアデータベース」に登録されている医師にPCPに求める機能についてアンケートを実施し、併せて訪問服薬指導料・居宅療養管理指導料及び無菌製剤処理加算を届け出ている薬局に、在宅緩和ケア医薬品提供体制構築のために必要と思われる機能に関する実態についてアンケートを実施しました。これらの結果をまとめ、在宅緩和ケアの専門家の意見も合わせて以下の通り「PCPに求められる機能(8項目)」を検討しました。

  1. 薬局が閉まっていても365日24時間連絡がつく体制の確保
  2. 訪問服薬指導・居宅療養管理指導を実施している
  3. 常時在庫してある医療用麻薬の種類が20種類以上あること
  4. 医療用麻薬注射剤の無菌調剤の実施
  5. 高カロリー輸液製剤及び関連機材の常時在庫
  6. 医薬品に対する問い合わせの常時受け付け
  7. 使用しなくなった医療用麻薬の回収・処分(他薬局調剤分も含めて)
  8. 緩和ケア関連製剤への対応

この「PCPに求められる機能」の各項目をすべて満たすことは、薬局にとっては非常に難しいものがあります。しかし、このPCPデータベースに登録されている薬局は、いろいろな制約の中でも、これらの項目を実施できるよう努力し、在宅緩和ケアの患者さんやご家族を支える覚悟を持った薬局です。まだまだ登録薬局は少ないですが、患者さんやご家族が「家に帰ってきてよかった!」と感じてもらえるよう、薬局の立場で在宅緩和ケアを支えていきたいと思っています。

「医療用麻薬や注射剤をどこの薬局でもらえば分らない」など困ったときに、このデータベースをお使いいただければ幸いです。

公益財団法人笹川記念保健協力財団助成
研究テーマ「在宅緩和ケア対応薬局のネットワーク化と情報提供」
研究班一同

最終更新日:2013年2月8日